『銃・病原菌・鉄』を読んだ

ちょっと前から歴史クラスタでちょくちょく話題になってて気になってたので読んでみた。

ちなみに文庫に無いと噂の2005年版追加章はここで読めます
ダイアモンド『銃、病原菌、鉄』2005年版追加章について

読みやすいって評判だったけど小説で慣れた身からするとちょっと読みづらいかな〜って言う印象。論文を読んでると思えば読みやすいほうだけど。
とにかく同じような文章が何回も何回も繰り返し出てくるので目が滑る滑る。要点を整理して圧縮すれば1/4くらいのボリュームに収まると思う。

考古学の話って割合ロマン重視で、ストーリーに沿って話を組み立てていく印象があるけど、この本は全世界規模で全年代を俯瞰して論理的に理論を組み立てていくのが目新しいと思った。
文明が次のステップに進むにはある程度恵まれた条件と苛酷な条件がバランスよく存在する必要がある〜みたいな話。
エイジオブエンパイアとかシビライゼーションが好きな人はすんなり受け入れられると思う。
身近な所で言えば「アイヌ人はなぜ文字を持たなかったのか」、「何で倭人との争いに負けたか」が納得できるかと。


大枠の話の進め方は大変理知的で納得の行くものが多いんだけど、下巻にある日本に関する記述がことごとく頓珍漢なものばかりでガックリ来る。
たとえばP.72で

日本人が、効率のよいアルファベットやカナ文字でなく、書くのが大変な漢字を優先して使うのも、漢字の社会的ステータスが高いからである。

いやいやいや、確かにステータスもあるけどそこは表意文字である漢字の表現能力も評価しようよ。
ぱっと見ただけでだいたいの意味が通じるし、文章量も少なくて済んで同音異義の問題も解決できてメリットもでかいですよ。
「難しい漢字使える俺カッケー」だけで漢字使い続けてるわけじゃないから!

ほかにもP.90で
「カタナはサムライの魂だから江戸時代には銃なんて言う卑怯なものが廃れたのだ」(意訳)
って書いてるけどこれもどうかと思う。
そこは、
「天下統一がなされたあとに、もはや必要なくなった武力が削減されるのは当然の流れであろう」
って書くべきところじゃないの?
変な日本知識植え付けてる人が身近に要るんじゃないの?と疑いたくなるレベルの誤解を披露してる。

そしてP.230でまた

日本は、日本語の話し言葉を表すには問題がある中国発祥の文字の使用をいまだやめようとしていない。

この人よっぽど漢字に恨みがあるんですかね?日本語の話し言葉にはひらがなを使うし、外国語だってカタカナでだいたい対応できるのにそこはスルーですか?ひらがなカタカナをスルーして、ハングルを発明した朝鮮半島を大絶賛したりしてるのはなんか腑に落ちないんですけど?
そんなに漢字にメリット無かったらとっくの昔に廃れてますってば(漢字廃止論 - Wikipedia
現に何回も漢字廃止論が繰り返され、結局戦後に難しい文字が簡略化されるにとどまったのは漢字を使い続けるメリットの方が大きかったからでしょう。


こうして書いてみると文句のほうが多いけど、本の内容自体は大変興味深いので機会があったら読んでおくことをお勧めします。