死ぬ権利ってなんだろう

「搾取される感じがするものはとにかくもう嫌なんですよ」 - Togetter
を受けて書かれた以下のエントリー

貧困者だって生きることに執着する。当たり前のことだ。金持ちだけが喜びを感じて生きているわけじゃねえんだよ。このブルジョワ階級のガキは「死ぬ権利も保障すべき」なんて言っているが、貧困層は別に、死ぬ権利がないから死にたいのを我慢してるわけじゃねえんだよ。死ぬ権利なんか誰にだってある。年間三万人以上も自殺者がいるのを見ればわかるじゃねえか。それでも生きてるんだよ。たいていの人間は、いくら困窮してもやっぱり死にたくねえんだよ。
2012-02-10

そうだろうか?

⑤自殺の原因・動機
20代・30代・40代・50代の自殺の第一原因は、「経済・生活問題」です。「経済・生活問題」は、遺書がある自殺者のうち約3割の原因です。
自殺者統計|自殺対策支援センターライフリンク

20代〜50代の自殺の第一原因は「経済・生活問題」で、60代以上は健康問題が第一原因だと解釈できる
『たいていの人間は経済問題や健康問題で困窮したら死にたいと思う』とデータは示している
死にたくはなかったかもしれないが、最終的に自殺という手段を選んでしまった以上、「本当は死にたくなかった」という言い逃れはできないだろう。
「死ぬ気でやればなんでもできる」という言い回しは嫌いだが、結果だけ見ればその手段を取らなかった事に変わりない。


話はちょっと変わって、最近パラドックス社の『戦国』と言うゲームを買った。
戦国時代の武将になって天下統一を狙うという、ぶっちゃけ『信長の野望』みたいなゲームだ。
外国の会社らしく、日本人と違った視点をゲームに取り入れていて、その中に『名誉』と言うパラメーターがある。

『名誉』は戦争で手に入れたりした領地を臣下に与えたり、金を臣下に与えたり、朝廷に貢いだりすると上がり、
戦争を隣国にふっかけたり、臣下から領地を取り上げたり、敵に送った忍者(スパイ)が捕まったりすると下がる(というか不名誉な事を実行するために消費すると言った方が良いかもしれない)

このゲームの面白いところは『名誉』が一定値以下になると『切腹』してプレイヤーキャラが後継者にバトンタッチできる所だ。
『名誉』が一定値以下の臣下に『切腹』を命じることもできる。
後継者は『名誉』の値を別に持っており、更に切腹した前代のキャラの半分程度の名誉が後継者に加算される。

『名誉』と『切腹』を外国のクリエイターが客観的に捉え、こんな形でシステムに組み込んで来たのにちょっと意表を突かれた感じだ


話を戻して、件の学生が言いたかった『死ぬ権利』とは、この『戦国』と言うゲームにある『切腹』システムのようなものだろう
現代社会では『切腹』つまり『名誉ある自殺』、もっと言うと『尊厳死』が認められていない。
自殺はどんなケースでも不名誉とされる風潮に疑問を持っている人間は少なくないと思う

木城ゆきと著の『銃夢』第9巻に、最終喜械(エンドジョイ)という装置が出てくる。
 理想都市ザレムにある屋外建物で、公衆トイレに似ている。ときどき人が入っていくが、誰も出てこない。これは公衆自殺機械──自殺したくなった人をすみやかに、やすらかに、衛生的に処理するものだった。
[日記] やはり公衆自殺機械は必要か | 思考回廊

http://bbs.thebbs.jp/moral/1142148745/

件の学生の率直な意見は周りの良識ある大人達によって窘められるべきかもしれないが、『死ぬ権利』つまり『尊厳死』について、もうちょっと考えてみるのも悪くはないだろう

リンク用追記

安楽死法 ‐ 死を選ぶ権利 — 駒沢 丈治 – アゴラ
2012-02-17
安楽死の話題があったので追記

自分なら京都認知症母殺人事件みたいな状況に陥ったら同じように心中するだけの覚悟はある
ドクター・キリコ事件みたいに善意で自殺幇助する覚悟のある人間も少なくないと思う
医者が全員そういう覚悟を持てという話じゃなく、覚悟のある人間がそれなりに居て、法が許すなら安楽死はシステムとして回るだろう。

僕が医者になってからの十数年で、「延命治療は望まない」という患者さんや家族が多数派になりました。

が事実で

「死を選ぶ権利」を、僕は否定はしません。いや、できません。
「死ぬな」というのが、「死にたい人」にとって、何かの救いになるのかと問われたら、あんまり自信もない。
極論すれば、「死ぬこと」は人間にとって「最後の権利」でもあるわけだし。

なら安楽死を法律として認めてもいいんじゃないかな。
「助かる見込みがない患者はとっとと殺せ」
ならもちろん反対だけど、生前葬とか言うのもあることだし親類縁者みんなが集まっているときに、意識がはっきりしているうちに看取られたいっていう権利は認められるべきだと思う。